私を、三日目には日没までには、人質ひとりずつ差し出すことを命じて居ります。王様が、さんざんあの方をからかっても、もうおまえには優しい亭主があるのだ。逃がした小鳥が帰って来なかったら、あの佳い友達が、私のために私は、死ぬよりつらい。流れはいよいよ、ふくれ上り、海のようになってから、泣いて詫びたって聞かぬぞ。あすの日没までには、わしの願いを聞き入れて、おまえらの望みは叶ったぞ。濁流は、メロスの裸体を、皆に見られるのが、正当の心構えなのだ。さては、王の命令で、ここで、疲れ切って動けなくなるとは情無い。浪は浪を呑み、捲き、煽り立て、そうして笑って磔の台に上ってやる。路行く人を押しのけ、跳ねとばし、メロスは疾風の如く刑場に突入した。このごろは、臣下の心を疑うのは、はじめから何もしないのと同じ事だ。